
≪0:31:35≫世界に誇る国際賞「京都賞」の分野を対象に開催されるシンポジウムです!
第7回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム「世界を動かした技術とその道しるべ -技術革新と生命倫理-」
「iPS細胞がひらく新しい医学」
山中 伸弥(京都大学 iPS細胞研究所長、教授)
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、ほぼ無限に増殖でき、体の全ての組織や臓器の細胞に分化できる能力、すなわち多分化能を備える細胞である。iPS細胞は細胞移植治療などの再生医療や創薬研究など、幅広い医療分野への貢献が期待されている。
2014年には、患者iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた加齢黄斑変性に対する世界初の臨床研究が実施された。我々は細胞移植医療のさらなる発展を目指し、再生医療用iPS細胞ストック作製プロジェクトを進めている。多くの患者に対応可能な、移植時の免疫拒絶反応を起こしにくい臨床用iPS細胞を樹立し、2015年より医療機関や企業への配布を開始している。このストックを用いた臨床試験が加齢黄斑変性、パーキンソン病、角膜上皮幹細胞疲弊症などで行われており、他にもいくつかの疾患で臨床試験実施の承認が得られているなど、iPS細胞の臨床応用は着実に前進している。現在、ゲノム編集技術を用いて、より多くの患者さんに適応するHLAゲノム編集iPS細胞の作製を進めている。また、創薬研究領域においても、患者由来iPS細胞を病態モデルとして用い、進行性骨化性繊維異形成症という稀少難病に対して既存薬が有効である可能性を見出し、医師主導治験を2017年より開始している。
近年の進歩が著しいゲノム編集技術は、遺伝病の予防または治療の鍵を握り、患者に大きな希望を与える。一方で、目的で無い部位に変異が入る、オフターゲットの可能性など、解決すべき問題点は多く存在する。さらに最近、アメリカではすでに、人工知能(AI)が心臓疾患のリスク予測や創薬に用いられており、今後ますますAIが医療分野に関与していくと考えられる。これら最先端技術を医療に応用するには、効果・安全性の担保はもちろんのこと、科学の暴走を阻止するために、科学者のみならず、国・社会を含めて、倫理的観点での十分な議論が必要であると考えている。
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京都大学-稲盛財団合同京都賞シンポジウム(略称“KUIP”クイップ)は、京都大学主催・公益財団法人稲盛財団共催により、2014年から毎年開催している国際シンポジウムです。2020年度は初めてオンラインで開催いたしました。
京都大学-稲盛財団合同京都賞シンポジウム
http://kuip.hq.kyoto-u.ac.jp/ja/
過去の講演
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京都賞
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※所属・役職・内容は動画制作当時のものです。
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